EV時代になれば誰でも自動車事業に参入可できる・・・、は本当でしょうか?

EV時代になれば誰でも自動車事業に参入可できる・・・、は本当でしょうか?

 

ここ2年の間に三菱自動車のiMIEVや日産自動車のリーフが発売され、にわかにEV(電気自動車)が賑わってきました(東電の原発事故で電力の安定供給に暗雲が立ち込めているので、今後はわかりませんが・・・)。化石燃料を燃やして走るガソリンエンジンよりも燃費に優れるだけでなく、温室効果ガスの排出量がきわめて少なく、大気汚染の元凶となる排ガスを出さない仕組みであり、地球環境に極めてやさしい乗り物といえます。1充電あたりの航続距離と充電スタンドの設置問題が解決できれば、ポスト内燃機関コミューターの本命?とも言われています。

そんなEVに関して良く聞く話が、「EVはバッテリーとモーターの組み合わせでシンプルな構造であり、知識と部品があれば誰にでも作ることができるようになるため、EV事業への参入は簡単である」というものです。これは本当のことなのでしょうか?

 

EVはバッテリーとモーターによる組み合わせで構成され、ガソリン車に比べると遙かに少ない部品点数で製作可能だと言われています。バッテリーやモーターはエンジンと違い自動車会社が作るものではなく、電池メーカーや重電メーカーが製造し、モーターを制御するインバーターなども家電メーカーや重電メーカーが製造するものであり、部品として出荷されているものもあります。自動車メーカーがEVを製造する際は、各部品をそれぞれのメーカーから調達するために、誰でも製作可能と言われるのだと考えられます。

この様々なメーカーから部品を調達して製品化する様子は、パソコンを製造する方法によく似ています。マザーボード、液晶パネル、キーボード、様々なインターフェース類などの部品、基本ソフトであるOSを調達し組立て製品にするパソコンであれば、誰でも参入できるという図式は成り立つかもしれません。現に台湾などの後発パソコンメーカーが世界のメジャーを駆逐してしまった感があります。

 

では、EVはどうでしょう。本当にパソコンのように自動車の関連していないメーカーが参入できるほど単純になっていくのでしょうか?私は全く違った考えを持っています。自動車はガソリンエンジンであろうがEVであろうが、自動車を設計製造する豊富なノウハウがない企業では参入は難しいと考えています。理由は2点あります。

 

1つめは自動車という製品は、人の生命を脅かす交通事故という負の側面があるために、安全性を確保するために様々な規制がかけられている点が挙げられます。そのもっとも大きな規制は衝突安全ボディを持っていなくてはならないというものです。ある時速で正面衝突、もしくは側面オフセット衝突しても、ドアが開閉できなくてはならないというものです。このボディシェル構造はそれこそ特許とノウハウの塊であり、この規制をクリアするだけのボディ設計製造ノウハウがなければ、国土交通省から完成車として販売する承認がおりません。部品を組み合わせたEVであっても、衝突安全基準をクリアできなければ公道を走る認可は簡単にはおりません。私有地ユースしかできないということになります。

 

2つ目は、自動車は物を運搬するという移動体であると同時に、乗員の快適性も提供しなくてはならないということです。現在の自動車は移動空間を快適に過ごすために、さまざまな工夫が凝らされています。空調設備、音楽や映像視聴環境、ノイズ対策、リクライニング可能なシートなどが施された、快適な移動空間が提供されます。これらの快適装備自体は様々な部品メーカーから購入することができますので、簡単に実現できるかもしれませんが、最も難しいのは快適な乗り心地ではないでしょうか。道路の凹凸を吸収して不快な振動を乗員に感じさせなような仕組みは、ボディ構造そのものと高度なサスペンションシステムによって実現されます。このサスペンションシステムの設計も自動車メーカーの独壇場で、路面にタイヤを最適な角度で接地させながらも、余分な振動は吸収するという実にうまく考えられた仕組みです。また自動車そのものの空力ボディもノウハウの固まりです。流麗なボディにより空気抵抗を軽減させることで、ノイズが少なくなり燃費がよくなり高速での安定性が向上します。

 

これらの自動車本体の構造的なものによる性能は、自動車会社でなければ設計することができません。部品だけを買ってきて組み立てても製品としては遠く及ばないものができあがるはずです。それこそ快適性も衝突安全性もそこそこでよいゴルフ場の電動カートであれば、新規参入もたやすいことと思います。

また自動車は売りっぱなしというわけにはいかないので、それらのメンテナンスのための設備の整備を考えるとさらにハードルはあがってきます。

 

このような理由から、EV時代が到来してもそれが自動車である以上、自動車メーカーにしか製造はできない、と結論づけておきます。

 

マンデー